研究室紹介
私たちの研究室では、樹木の環境ストレス耐性機構に関する研究と熱帯荒廃地の環境造林に関する研究を同時に行っています。これらの研究により、樹木、森林の理解を深め、様々なタイプの森林を造成する技術の開発を科学的に支えたいと考えています。
研究テーマ
1.樹木の環境ストレス耐性機構
野生植物である樹木は、実験植物や作物にはない環境ストレス耐性機構を持っている可能性があり、樹木のストレス生理学研究は大きな意義を持ちます。これまでに私たちの研究室は、様々な樹木に関する酵素活性測定、成分分析、分子生物学的解析の手法や、研究の基盤となる樹木の栽培系を確立しています。これらの手法と環境計測、土壌環境分析、生態生理測定といったフィールドでの研究手法を組み合わせ、造林の際に生じる環境ストレスに対する樹木の応答やストレス耐性機構に関する研究を行っています。
- Melaleuca cajuputiの低酸素ストレスに対する糖輸送・糖代謝・呼吸系の適応的反応
- Syzygium属樹木の湛水耐性機構
- 熱帯産樹木の低酸素環境における貯蔵養分の動態
- フトモモ科樹木のアルミニウム耐性機構
- Acacia mangiumの土壌高温に対する根の耐性機構
- Acacia属樹木の高温に対する光合成系の応答
- マメ科樹木のリン酸欠乏に対する適応的反応
- フタバガキ科樹木の高温による養分吸収阻害、高温に対する光合成系の応答
造林技術の最も重要な点は、その場所の環境を把握し、その環境に適合する樹木を植えることです。しかし、立地環境の劣化が著しい問題土壌の荒廃地では、それだけでは森林を造れないことがあります。この様な場所では、環境ストレス応答の種間差や環境ストレス耐性種の耐性機構の解明と、それを踏まえた環境改善法の開発が必要です。これは、従来の産業造林とは異なる技術の体系であり、私たちは「環境造林」の技術と呼んでいます。私たちは熱帯低湿地域の荒廃地の環境造林技術の確立を目指して、タイ南部で研究を行っています。現在、取り組んでいる地域は、かつてはイネ、最近はオイルパームの生産のために開発が進められてきました。土壌条件が厳しい上に季節的な水位変動の幅が大きく、雨季には冠水する環境にあり、十分な収量が期待できず、作物が枯死してしまうこともままあります。そのような環境において適応可能な環境造林技術の確立は、現在、その開発が二酸化炭素放出の面でも生物多様性劣化の面でも大きな問題となっている熱帯泥炭湿地の新たな持続的利用方法の提示に繋がるものと期待しています。
- 熱帯ヒース林の人為的破壊によって生じた荒廃砂質土壌における造林樹種の選抜と造林技術の開発
- 泥炭の消失によって生じた酸性硫酸塩土壌における造林樹種の選抜と造林技術の開発
- 泥炭保全を考慮した熱帯泥炭土壌における造林樹種の選抜と造林技術の開発
- 荒廃地での活着率を高めるための育苗法の改善
- ストレス感受性種の活着率を高めるための先行造林法の開発
- 環境ストレス応答の種間差を明らかにする実験生態学的研究
- Acacia mangium人工林のバイオマスと環境修復効果
- Melaleuca cajuputi人工林の炭素固定能の評価
- 泥炭湿地の土壌と樹木からのメタン放出
- 泥炭を保全した上での持続的木質バイオマス生産の可能性の探索