第120回大会のテーマ別シンポジウム T19 「樹木の成長と環境 −根、葉、いろいろ−」の趣旨
樹木の成長機構とその環境応答を理解することにより森林の機能と環境変動に対する応答への理解が深まります。光、水、養分、温度といった環境因子に対してどのような生理的・形態的反応をするかが生育場所を固定されている植物の個体あるいは種の維持を決定します。実験植物等で明らかとなってきた分子レベルでの成長機構や環境応答機構を参考にしながら、永年生で個体サイズが巨大になるという特徴をもつ樹木の成長の仕組みに関する研究が進められてきました。私たちは第108回大会より継続してテーマ別セッション「樹木の環境適応とストレスフィジオロジー」を開催してきましたが、より広い分野にわたる研究者の間で情報と意見の交換をする場にしたいという気持ちから、第119回大会にセッション名を「樹木の成長と環境」と改めました。第120回大会では、【樹木根の成長と機能】を継続して主催されてきたグループのコーディネーターである森林総研関西支所の平野恭弘さんをゲストコーディネーターにお迎えし、三部構成のテーマ別シンポジウムを企画しました。
第一部では、王子製紙株式会社森林資源研究所の土居(木原)智仁さんに遺伝子組換え酸性土壌耐性ユーカリの開発に関する研究成果を、東京大学アジア生物資源環境研究センターの山ノ下卓さんに熱帯樹木の根の湛水ストレス応答に関する研究成果を、横浜国立大学大学院環境情報研究院の藤巻玲路さんに窒素環境に対する細根の形態の応答性に関する研究成果を、それぞれ軸としながら根の環境応答に関するレビューを30分ずつしていただきます。環境に対する根の生理的・形態的応答についての理解を深める有意義な場となることを期待しています。
第二部では、本セッションにおいて多くの興味深い成果を発表されてこられた九州大学大学院農学研究院の小林善親教授が2009年3月に退職されることを記念して、同教授にこれまでの研究成果をご紹介いただきます。植物の光合成、特にエネルギー変換反応、電子伝達反応、ATP合成、炭素代謝とその制御機構に興味を持って研究を続けてこられた小林教授の研究の熱意とその成果に触れることのできるまたとない機会です。
第三部では、部門別でポスター発表される方々にその発表内容を1分間で紹介していただき、研究分野や研究手法を越えた情報・意見交換の活性化を図りたいと考えています。ポスター紹介をされる方の多くが発表を予定されている「生理」のポスター会場のコアタイム(3月28日12時〜13時、Pb会場(吉田南総合館北棟2階リフレッシュコーナー))を討議の場として活用したいと思います。
このセッションでは、野外の成木個体から細胞・分子レベルまでを対象に、様々な手法で研究をしている人にお集まり頂き、樹木の成長と環境応答についての理解を深めていきたいと考えています。特にこれまで他の会場で個別に報告されてきた方の報告や討議への参加を期待しています。研究分野や研究手法をこえた大きな討論の場ができればと考えております。
コ−ディネ−タ−:則定真利子(東京大学)、北尾光俊(森林総合研究所)、小島克己(東京大学)、斎藤秀之(北海道大学)、津山孝人(九州大学)、二村典宏(森林総合研究所)
ゲストコ−ディネ−タ−:平野恭弘(森林総合研究所)