第118回大会までのテーマ別セッション「樹木の環境適応とストレスフィジオロジー」の趣旨
森林、樹木は地球環境の維持に重要な役割を果たしており、地球規模の環境変動に対する樹木の適応機構や防御機構を理解するためのストレスフィジオロジ−研究が注目を集めています。一般に、植物は生育場所を移動することができず、光条件、温度、大気成分、土壌水分、土壌養分、有害物質の吸収、病原菌の感染などの環境変化に対応した複雑な適応機構によって個体あるいは種を維持しています。実験植物や一部の農作物では、こうした環境変化に応じた適応機構が分子レベルで理解されつつあります。一方、樹木は永年生であり、樹齢や個体サイズに応じた形態形成や成長特性を示すことから、実験植物や農作物で得られた知見をそのまま樹木に適用することはできません。樹木の環境適応機構を明らかにするには、各種のストレスに対する樹木の反応特性をあらゆる角度から解析することが必要です。私たちは、これまで様々な会場で報告されてきた樹木の環境適応に関する研究を一括して討議する場の設置を提案し、日本林学会第108回大会より継続してセッションを開催してきました。
このセッションでは生態生理学を始め、植物生理学、生化学、細胞生物学、遺伝学、分子生物学に関する基礎的情報だけでなく、樹木の生育範囲の拡大を目指した遺伝子導入等の新機能付与に関する基礎研究も募集いたします。また、フィールドでの実験やストレスに対し興味深い反応を示す樹木の紹介も歓迎いたします。特にこれまで他の会場で個別に報告されてきた方の報告や討議への参加を期待しています。
コーディネーター:篠原健司(森林総合研究所)、向井譲(岐阜大学)、小島克己(東京大学)