第122回大会のテーマ別シンポジウムT11 「樹木の成長と環境」の趣旨

 樹木の成長機構とその環境応答を解明することにより森林の機能と動態に対する理解が深まります。生育場所を固定されている植物の成長や生存は、光、水、養分、温度といった環境因子に対する形態的・生理的な応答によって大きく左右されます。これまで、実験植物等で明らかとなってきた成長や環境応答の分子レベルでの機構を参考にしながら、永年生で個体サイズが巨大になるという特徴をもつ樹木の成長の仕組みに関する研究が進められてきました。野外の成木個体から細胞・分子レベルまでを対象に様々な手法で研究をしている人が集い、樹木の成長と環境応答についての理解を深め、研究分野や研究手法の枠をこえた大きな討論の場を持ちたいと考え、第108回大会から継続してテーマ別セッションを開催しています。本大会では、三部構成のテーマ別シンポジウムを企画します。第一部では、静岡大学角張嘉孝教授の退職を記念して海抜高度別ブナ林での生理生態学研究40年の思い出話をしていただきます。第二部では、ミニシンポジウム「光合成〜個葉から個体、群落へ〜」と題して、国立環境研究所の飯尾淳弘博士に林冠内の不均一な環境と個葉の光合成について、北海道大学の中路達郎博士に分光放射特性を用いた森林群落の生理機能のリモートセンシングについて、それぞれの研究成果を紹介して頂きます。個葉の光合成の環境応答から個体の成長や林分の物質生産をどのように推測できるのか、そのデータ解析法や手法の限界、今後の課題と展望について考えます。第三部では、部門別で発表される樹木の成長や環境応答に関する研究成果を持ち寄り1分間スピーチで紹介して頂き、研究分野や研究手法の枠を越えた情報・意見交換の活性化を図ります。
 
コ−ディネ−タ−:斎藤秀之(北海道大学)、北尾光俊(森林総合研究所)、小島克己(東京大学)、津山孝人(九州大学)、則定真利子(東京大学)、二村典宏(森林総合研究所)